date

写 真
解 説
原木

19.2.24

 材料は、「いちょう」です。
 サイズは640o×640o×250oです。
 写真の手前側が木口です。乾燥が始まると木口側からひび割れが入ってくるので、それを防止するために新聞紙が糊付けされています。こうすることで、直接に空気に触れること(風にあたること)を防止し、急速かつ部分的な乾燥を防止する訳です。
 陶芸における土の乾燥と同じで、その速度が遅いだけなのだと理解しました。
 保管は、小屋の中の直接日光が当たらない場所で、ビニールシートを軽くかけておくということだそうでした。

 材料は、このほかに660o×660oというのもあったのですが、大きすぎるし、縁の部分が木の外周(樹皮)にかかっているようたったので、比較的小型で、傷の少なそうなものにしました。
戻る
↓19.4.20型紙を作りました。  
型紙
19.4.20
 型紙を作りました。
 写真は、上下に56cm、左右が54cmの楕円になっています。
 これには理由があります。

 材料は乾燥するに従って縮んで行きますが、年輪方向と繊維方向ではその収縮率が異なります。繊維方向については、あまり縮みませんが、年輪方向については、大きく縮みます。上掲の木工所の話では、5%は考えておいたほうが良いということでした。つまり、直径54cmを予定するならば、年輪方向の長さは56.7cmを確保する必要があるということです。
 私の場合、最終的な調整を乾燥しきってから行うことにして、とりあえず、56cm×54cmにしました。
 なお、縁の幅(当初の肉厚)は4cmにします。したがって外寸は56+4+4=64cmになります。ただし、最終的な肉厚は3cm〜2.5cmにする予定です。「軽さ」を目指します。
戻る
 深さの型紙です。
 手書きで描くときれいな線がでませんので、正しい楕円を描くことにしました。長径(写真の左右)54cm、短径(深さ17cm)34cm、焦点距離44cmに設定しまして、ピンと紐を使って描きました。
 私が作りたい形は底辺部分がもう少し広くしたものなのですが、それは実際に材料を削りながら決めていくことにしました。したがって、この型紙はあくまでひとつの基準です。
 しかし正確な形状をしていますから、作業の良い基準になると思います。
↓19.4.21 "のみ"と"ちょうな"を使った内堀りの作業です。
内堀り
(のみ)
19.4.21

 作業場は「彩の国ふれあいの森埼玉県森林科学館」というところです。秩父のさらに奥に入った大滝村というところにあります。
 全くの山の中、この建屋と宿泊施設(こまどり荘)があるのみです。

戻る
 
 作業場の中です。
 木工所で四角形に切り出されていた原木は、ここに搬入され、チェンソーで円形にカットされておりました。

 写真は、以後の概略の作業要領を、先生から聞いているところです。


それぞれの材料には、「井」の字に溝が彫られており、作業しやすい形に準備されておりました。

 この段階で、中心を改めて決定し、予め準備しておいた型紙を使って型を取り直しました。内径は54cmとしておりますが、最終的な仕上げの段階で更に削り取る分を見越してその5o内側を切り出していくことにしました。したがって荒削りの段階は内径53pです。

 ノミとげんのうはこちらで準備して頂いたものでして、既に刃は研いであり、げんのうの重さも適度なものでした。
 堀り始めの状況です。
 手順の最初は、内径にあたる線に沿ってノミで切り込みを入れることです。こうすることで、掘り込んでいく際に内側に発生するヒビ割れが、外に走らないようにすることができます。こういうことは、やはり経験者(プロ)に教えてもらわなければ分からないノウハウです。

 当初は、サイコロ状になった木片をはずしていくイメージで作業を進めます。
 材料にまたがって作業をしていますが、これにも意味があって、げんのうを振り下ろす際に重力が利用できるようにするためです。2日間の長丁場になりますからできるだけ筋力を使わないようにする必要があります。

 また、この段階は荒削りをすることですから、げんのうもコツコツと当てるのではなく、力を掛けずに大きくゆっくりガツンガツンと振り下ろすのが適当のようです。

 写真では、素手でやっておりますが、手袋をする必要があります。打ち損じて左手を打つ恐れがあります(実際、何回も打ちました)。

 げんのうをノミの頭にきれいに当てて行かねばならないのですが、ノミの刃先ばかりを見ていると左手をたたいてしまいます。ノミの頭の方を多めに見ることが必要のようです。
だいぶ掘り進みまして、ノミが使いにくくなりました。
 
 掘っていますと、木というのは水分のかたまりであることが分かります。木の場所によりますが、刃を入れたときに水がじわっと出てきます。ざくっ、じわっ、ざくっ、じわっ、という感じです。
 そして、この水分があるから、作業が比較的楽にできるということだそうです。乾燥した木では硬くてこうはいかないそうです。

 この間約1〜2時間でしょうか。
内堀り
(ちょうな)
 次の段階は「ちょうな」の作業です。
 ちょうなは「手斧」が変化した言葉で、辞書によると「大工道具の一種。木材を荒く削るのに使う鍬(くわ)形のもの」とい書いてあります(知らなかった)。

 スナップを効かせてざっくりざっくり削っていくのですが、慣れないうちはそうはいかず、ごっとんごっとんと材料の表面を叩いているだけで刃先がうまく刺さりません。

 しかし、慣れると大変効率の良い道具です。
 刃先のカーブに沿って、スナップを効かせた使い方をするとうまく削れるようです。
 さすが、伝統のの道具。先人たちの工夫が注ぎ込まれているという気持ちになります。
 このカーブは、伊達ではなく考え抜かれた絶妙のカーブなのですね。
 その伝統を今に伝える、先生の作業振りです。
 写真の方は、「会長」と呼ばれておられる方で(正式の会の名称は聞き忘れました)、大滝村近在にお住まいの林業を職業にされている方です。今回の講師でした。

 作業振りを見させていただくと、プロゴルファーを髣髴(ほうふつ)させます。
 トップ、ダウンスイング、インパクト、(ごく短い)フォロースルー…、無駄の無いきれいなスイングです。
 切り取られる木片までもが大きくきれいな形をしています。あわせて、鉢の形もきれいに仕上げられております。さすが、であります。しばらく見とれました。
 おじさんたちが黙々と作業をしております。
 みなさん、そばオタクおやじでして、マイ木鉢を作るという執念に燃えております。
 
 中央にうずたかくなっていますのは、木屑です。そのつどセメント袋に詰められて片付けられておりました。最終的に(後で出てきます、電気かんなの削りくずも合わせると)軽トラック一台分の木屑になりました。64cm×64cm×25cmの木のかたまり10個から、厚さ3cmほどの器を削り出すのですから、その位の屑は出る訳です。

 これらは美しい鉢を作り出すための大変尊い木片であって、決して屑ではない、と思いますよ。ありがとう、木片達。(オーバー?)
↓19.4.22午前 "やりかんな"を使った内堀りです。
内堀り
(やりがんな)
19.4.22
午前
 手斧(ちょうな)で荒堀りしたあとの、仕上げの鉋(かんな)がけです。
 「やりがんな」という道具を初めて使いました。刃の部分は単に円形に曲がっているのではなく微妙にねじれています。操作要領は、まず左手でA部分をもち、右手でB部分を持ちます。削る際は、B部分を固定し、A部分を掴んだ腕を伸ばした状態から引き寄せるように動かします。つまり、B点が梃子(てこ)の支点になって、刃先の作用点に力がこめられる訳です。これで、鉢の内側をえぐって行くということになります。いわば木鉢用の専用工具なのですが、大変よくできています。
戻る
  やりがんなの先端部です。
 右利き用と左利き用がありました。
 というよりも、右側から内側に向けて削る時には右用、左側から内側に向かって削るっ倍には左用を使うということのようでした。(写真は右用)
 概ね内側を完成させた状況です。
 かんなの使い方になれましたので、できれば完全にして行きたかったのですが時間が無く、仕上げは自宅でやることにしました。
 普通の「台かんな」を使う時のように、さくりと削られる感触はなんともいえませんでした。
 8方位にマーキングしています。あとあと、なにかと役に立つのではないかと。
↓19.4.22午後 電気かんなを使った外側の荒削りです。
外側
(荒削り)
19.4.22
午後
 電気鉋(かんな)を使って、外側を一気に削りだします。
 あらかじめ、底の中心を決定し、高台部分の大きさを描いておく必要があります。
 電気鉋は、比較的強力なやつでして、がんがん削れます。内掘りが少しづつしか進まないのと比べて、機械力が使えるので大変楽です。
戻る
  だいぶ削り進んだ状況です。
 削りくずが山のようにでます。このあと、高台を作る作業をするのですが、時間が迫ってきたために写真はありません。1時間以上も削り続けていると、振動のために手先がおかしくなりました。
 右の写真は。福○さんの作業状況です。
 一応全員完成した状態です。
 右端の人は、やや時間不足でした。
 私のは、右から2つ目の高台(こうだい)がついたやつです。高台をつけたのは私だけでしたが、皆さんも多分こうするはずです。
 重量は相当にあり、やっと抱きかかえられる状態でしたから20〜25`はあったのではないでしょうか。ほとんどが水分です。
19.4.28 裏側の底部分を"のみ"で削りました。
裏底削り 19.4.28

 ここから自宅での作業です。
 
 陶芸で言えば、高台削りという作業に該当します。
 最終的には、別途仕上げの作業を行いますから、ここはざっと削ってみました。
 底に穴が開くとまずいので、鉢の高さと深さを測っておいて、底の厚みを残した深さを削りだします。
 
 やり方は、木鉢作りの最初にやったと同じように、まず、円周に沿ってのみを入れます。これは、割れ防止のためです。その後、主に丸のみを使って、底の部分をえぐりだしていきます。この段階で厚みが3.5〜4cmはあるはずです。
 まだ、水分が多く含まっているので、サクサクと削り取れます。

戻る
 一応、本日の作業終了。
 高台が1.5〜2cmほどあります。これでは高いので、削りとる必要があります。
 
 次回の作業は電気かんなを予定しているので、その際に削り取ります。
 将来的には、木鉢の底部分の厚さを2cm位にしたあと、高台の高さはできるだけ低くする予定です。
 全体的に鉢が高くなると縁に腕がかかって水回しの作業がしにくくなるからです。
 私だけのためにどんどんカスタマイズして行きます。
19.4.30 電気かんなで荒仕上げをしました。
荒仕上げ 19.4.30  乾燥させて行く前に、ひび割れ防止をする必要があります。
 このために、もう少し完成度を高めておく必要があるということから、電気かんなを近所のドイトかた借りてきました(1泊2日で500円)。
 作業の概要は、
@上の縁の部分および高台の下の部分をきれいにすること
A厚みを取ること
Bあわせて覆輪(ふくりん;縁の部分に厚みを持たせた取っ手)を作ること
 です。

 写真は、これらの作業を概ね終わったところです。
戻る
 上の作業をしていると、みるみるうちに乾燥が進み、細かいひび割れが始まりました。
 写真のように、木口の部分で、放射状にひびが走っています。
 この手当ての仕方については、鈴○さんから聞いておりまして、電線をとめるステープルで処置しなさいということでしたが、私は写真のように、ホッチキスを使用しました。ひびが小さいし、たくさん使えば良いだろうと思ったからです。
 上の処置をしたところで、長期の乾燥期間に備えて、新聞紙を縁の部分および木口の部分(外側と内側)に貼り付けました。これで、表面の急乾燥を防止する訳です。
 糊は、障子用のものを使用しました。
 ただし、新聞紙の硬さに比べて糊の力が弱いので、組み合わせとしては適当ではないようです。(あとで障子紙などに変えました。)
 一応の処置を終わったところで、借用した電気かんなの最適利用のためにも、もう少し厚みを取ることにしました。
 このために、写真のようなコンパス(本来は陶芸用)で厚みの測定をしました。
 厚みが均一になっていないことは、手で触っても分かりますが、これで測ると1cm以上の差があることが分かりました。(下の写真)

 下の左写真の部分は厚さ4.5cm、右写真の部分は底近くが6.2cmになっています。

(↓次のページへ)